「退職を決意し、勇気を出して会社に申し出たのに、まさかの給料と退職金の減額通告…!」
長年勤めた会社に退職の意思を伝えた途端、今まで当然のように支払われてきた給料や、将来受け取るはずだった退職金が減額されるかもしれないと言われたら、誰しも大きな衝撃を受けるでしょう。「そんなことって許されるのか?」「一体どうすればいいんだ?」と、不安と怒りでいっぱいになるのは当然です。
退職は労働者の正当な権利であり、原則として会社がこれを妨げることはできません。ましてや、退職を申し出たことを理由に、一方的に給料や退職金を減額するというのは、法的に問題がある可能性が高い行為です。
この記事では、退職申し出後の給料と退職金の減額が法的に認められるのかどうか、もし不当な減額を通告された場合にどのように対処すべきか、そして事前に確認しておくべきことについて詳しく解説していきます。もしあなたが今、同じような状況に置かれているなら、この記事を最後まで読んで、冷静に状況を判断し、適切な行動を取るための一助としてください。
え!退職申し出で給料と退職金が減額?その通告は違法?
退職を申し出たことを理由とした給料や退職金の減額は、原則として違法である可能性が高いと言えます。
給料の減額について:
労働契約法第8条では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と定められています。つまり、労働条件(給与を含む)を変更するには、原則として労働者と使用者の合意が必要です。
あなたが退職を申し出たという一方的な理由で、会社があなたの同意なしに給料を減額することは、労働契約法に違反する可能性が高いです。もちろん、就業規則に明確な減給事由が定められており、かつその事由があなたの行為に該当する場合(例えば、重大な業務怠慢や不正行為など)は、減給処分が認められる可能性もあります。しかし、「退職を申し出た」という事実自体を理由とした減給は、正当な理由とは言えません。
退職金の減額について:
退職金は、会社の就業規則や退職金規程に基づいて支払われるものです。これらの規程に、退職を申し出たことを理由とした減額規定がない限り、会社が一方的に退職金を減額することは不当であると考えられます。
ただし、就業規則や退職金規程に、懲戒解雇の場合や、在職中の重大な非違行為があった場合に退職金を減額または不支給とする旨の規定がある場合は、その規定に基づいて減額される可能性はあります。しかし、単に「退職を申し出た」という理由だけで減額することは、一般的に認められません。
会社が退職を申し出たことを理由に給料や退職金の減額を通告してきた場合、まずはその理由を明確に確認し、それが就業規則や労働契約に照らして正当なものなのかどうかを見極めることが重要です。
給料減額は原則NG!ただし例外も?労働契約と法律の原則
前述の通り、労働契約法に基づき、給料を含む労働条件の変更には労使双方の合意が必要です。したがって、退職を申し出たという一方的な理由で、会社があなたの給料を減額することは、原則として認められません。
給料減額が認められる可能性のある例外的なケース:
- 就業規則に明確な減給事由と手続きが定められている場合: 例えば、重大な業務怠慢、横領などの不正行為、会社の信用を著しく損なう行為など、就業規則に減給の事由が明確に定められており、かつその手続き(弁明の機会の付与など)が適切に行われた場合に限られます。しかし、この場合でも、「退職を申し出た」という事実自体を理由とすることはできません。
- 労働者本人の同意がある場合: あなたが納得し、合意の上で給料減額を受け入れる場合は、法的に問題ありません。しかし、会社からの強要や不当な圧力によって同意せざるを得なかった場合は、その同意は無効となる可能性があります。
- 降格に伴う給料減額: 業務遂行能力の低下など、正当な理由に基づく降格処分に伴う給料減額は、就業規則に定めがあり、合理的な範囲であれば認められることがあります。しかし、この場合も、退職申し出を直接の理由とすることはできません。
退職を申し出た後に会社から給料減額を通告された場合は、まずその理由を会社に詳しく確認し、その理由が上記の例外的なケースに該当するのかどうかを慎重に判断する必要があります。もし、納得のいかない理由であれば、毅然とした態度で減額に応じない姿勢を示すことが重要です。
退職金の減額はアリ?就業規則と減額事由の確認ポイント
退職金の減額についても、原則として会社の就業規則や退職金規程に定められた根拠が必要です。単に退職を申し出たという理由だけで、会社が一方的に退職金を減額することは、不当であると考えられます。
退職金減額が認められる可能性のあるケース:
- 就業規則や退職金規程に明確な減額または不支給の規定がある場合: 例えば、懲戒解雇となった場合、在職中に会社に重大な損害を与えた場合など、具体的な減額または不支給の事由が定められている場合に限られます。しかし、この場合でも、「退職を申し出た」という事実自体を理由とすることはできません。
- 労働者本人の同意がある場合: あなたが納得し、合意の上で退職金の減額を受け入れる場合は、法的に問題ありません。しかし、会社からの強要や不当な圧力によって同意せざるを得なかった場合は、その同意は無効となる可能性があります。
退職金の減額について会社から通告を受けた場合は、まず会社の就業規則や退職金規程を確認し、減額の根拠となる規定が存在するかどうか、そしてあなたの状況がその規定に該当するのかどうかを慎重に確認する必要があります。もし、減額の根拠となる規定がなく、単に退職を申し出たことを理由としている場合は、不当な減額である可能性が高いと言えます。
不当な減額には断固抗議!会社と交渉する際の注意点
もし、会社からの給料や退職金の減額が不当であると考えられる場合は、毅然とした態度で会社に抗議し、交渉することが重要です。
交渉する際の注意点:
- 冷静かつ論理的に主張する: 感情的にならず、事実に基づいて、なぜ減額が不当であると考えるのかを具体的に説明しましょう。
- 就業規則や労働契約の内容を根拠にする: 給料や退職金に関する規定、労働契約の内容などを改めて確認し、会社の主張の矛盾点や不当性を指摘しましょう。
- 減額の理由を明確に問いただす: 会社が減額の根拠としている理由を具体的に聞き出し、その正当性を検証しましょう。
- 記録を残す: 交渉の日時、場所、参加者、内容などを詳細に記録しておきましょう。メールや書面でのやり取りも保管しておきましょう。
- 強要された場合は明確に拒否する: もし会社から減額を強要された場合は、明確に拒否する意思表示をしましょう。
- 第三者の意見を求めることを示唆する: 必要に応じて、労働基準監督署や弁護士などの専門機関に相談することも検討している旨を伝え、会社にプレッシャーをかけることも有効です。
ただし、交渉はあくまで冷静に進めることが重要です。感情的な対立は、問題解決をより困難にする可能性があります。
泣き寝入りしない!不当な減額に対抗する法的手段
会社との交渉がうまくいかない場合や、明らかに不当な減額であると判断できる場合は、泣き寝入りせずに、以下のような法的手段を検討しましょう。
- 労働基準監督署への申告: 会社が労働基準法や関連法規に違反している疑いがある場合(例えば、不当な減給など)に、労働基準監督署に申告することができます。労働基準監督署は、会社に対して調査を行い、是正勧告や指導を行うことがあります。
- 労働審判: 裁判所で行われる、労働者と使用者間の紛争を迅速かつ適切に解決するための手続きです。裁判官と労働審判員で構成される労働審判委員会が、双方の主張を聞き、調停を試みたり、審判を下したりします。
- 民事訴訟: 最終的な法的解決手段として、裁判所に損害賠償請求訴訟などを提起することができます。ただし、時間と費用がかかるため、慎重に検討する必要があります。
- 弁護士への相談・依頼: 法的な手続きを進めるにあたっては、弁護士に相談し、代理人として交渉や訴訟を依頼するのが一般的です。弁護士は、あなたの権利を守るために専門的なサポートを提供してくれます。
これらの法的手段は、時間や費用、労力がかかる場合もありますが、不当な減額に対して対抗するための有効な手段となります。諦めずに、専門家の助けを借りながら、適切な対応を検討しましょう。
退職前に確認すべき!給与と退職金に関する重要書類
退職前に、自身の給与と退職金に関する以下の重要書類を確認しておくことは、不当な減額を防ぐため、また、万が一トラブルが発生した場合の証拠となります。
- 労働契約書: 雇用条件、給与の支払い方法、減給に関する規定などが記載されています。
- 就業規則: 労働時間、休日、休暇、賃金、退職金など、労働に関する基本的なルールが定められています。特に、賃金規定と退職金規程は詳細に確認しましょう。
- 給与明細: 毎月の給与の内訳や控除額などが記載されています。過去の給与額を確認する上で重要です。
- 退職金規程: 退職金の支給条件、計算方法、支払い時期、減額や不支給に関する規定などが詳細に定められています。
- 人事評価に関する書類: 過去の人事評価の結果は、退職金の算定や減額の理由に関わる可能性があります。
これらの書類を事前に確認し、内容を理解しておくことで、会社からの説明の矛盾点や不当な点を早期に発見することができます。もし、これらの書類が開示されていない場合は、会社に開示を求めることができます。
もしもの場合に備えて!相談できる専門機関と証拠の保全
万が一、退職を申し入れた後に給料や退職金の減額を通告された場合に備えて、相談できる専門機関を把握しておくとともに、証拠を保全しておくことが重要です。
相談できる専門機関:
- 労働基準監督署: 不当な減給など、労働基準法違反の疑いがある場合に相談できます。
- 弁護士: 法的なアドバイスや交渉、訴訟などを依頼できます。
- 労働組合: 会社の労働組合や、地域や業種ごとの労働組合に相談できます。
- 法テラス(日本司法支援センター): 無料の法律相談や弁護士費用の援助を受けられる場合があります。
- 都道府県労働局の労働相談コーナー: 労働に関する様々な相談を受け付けています。
保全すべき証拠:
- 労働契約書、就業規則、退職金規程: 給与や退職金の条件に関する重要な書類です。
- 給与明細: 過去の給与額を証明する書類です。
- 減額通告書(書面やメールなど): 会社からの減額の通知を保管しておきましょう。
- 減額理由に関する会社とのやり取りの記録: 口頭での説明も、日時、担当者、内容を記録しておきましょう。メールでのやり取りは全て保存しておきましょう。
- 業務内容や成果を証明する書類: 不当な減給の理由が能力不足などである場合、反論の根拠となる可能性があります。
これらの準備をしておくことで、いざという時に迅速かつ適切に対応することができます。
まとめ
退職を申し出たことを理由とした給料や退職金の減額は、労働契約法や就業規則の原則から逸脱しており、違法である可能性が極めて高いと言えます。給料の減額には労働者本人の合意が原則として必要であり、退職金の減額も就業規則や退職金規程に明確な根拠が必要です。単に退職を申し出たという事実だけでは、正当な減額理由とは認められません。
もし会社から不当な減額を通告された場合は、冷静かつ論理的に会社に抗議し、交渉することが重要です。就業規則や労働契約の内容を根拠に主張し、減額理由を明確に問いただしましょう。交渉の際には、記録を残し、強要には明確に拒否する姿勢を示すことが大切です。
会社との交渉がうまくいかない場合は、労働基準監督署への申告、労働審判、民事訴訟などの法的手段を検討しましょう。弁護士や労働組合などの専門機関に相談することも有効です。泣き寝入りせずに、自身の正当な権利を守るために行動することが重要です。
退職前に、労働契約書、就業規則、給与明細、退職金規程などの重要書類を確認し、自身の給与や退職金の条件を把握しておくことは、不当な減額を防ぐ上で不可欠です。また、万が一のトラブルに備えて、会社とのやり取りの記録や関連書類を保全しておくことも重要です。
退職は、労働者の正当な権利です。不当な減額に屈することなく、毅然とした態度で会社に対応し、必要であれば専門家の力を借りながら、自身の権利をしっかりと主張しましょう。
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