「いよいよ退職日が近づいてきたけれど、社会保険の手続きって何をすればいいんだろう?」
退職は、新しい生活のスタートであると同時に、これまで加入していた社会保険の切り替えが必要となるタイミングでもあります。健康保険、厚生年金、雇用保険など、これらの手続きを適切に行わないと、医療費が全額自己負担になったり、将来の年金受給に影響が出たり、失業給付を受けられなくなったりと、様々な不利益を被る可能性があります。
しかし、社会保険の手続きは複雑で、何から手をつければ良いか迷ってしまう方もいるかもしれません。
この記事では、退職前に会社で行う手続き、退職後に自身で行う手続き、そして転職する場合の手続きについて、それぞれの流れと注意点を分かりやすく解説していきます。スムーズな社会保険の移行のために、ぜひこの記事を参考にしてください。
退職前に確認!社会保険の種類と手続きの全体像
退職前後に必要となる社会保険の手続きは、主に以下の3つの保険に関するものです。
- 健康保険: 病気やケガをした際の医療費を保障する保険です。退職後は、国民健康保険への加入、または退職前の健康保険の任意継続という選択肢があります。
- 厚生年金保険: 老後の生活を保障する年金制度です。退職後は、国民年金への切り替えが必要となる場合があります。
- 雇用保険: 失業した際に、再就職までの生活を支援する保険です。失業給付(基本手当)の受給には、一定の条件と手続きが必要です。
退職前には、会社の人事担当者に退職日を伝え、社会保険の手続きについて確認しておくことが重要です。会社が行ってくれる手続きと、自身で行う必要がある手続きを把握しておきましょう。
手続きの全体像:
- 退職前に会社で行う手続き:
- 健康保険資格喪失手続き
- 厚生年金保険資格喪失手続き
- 雇用保険被保険者資格喪失手続き
- 離職票の交付(希望者、または一定の条件を満たす退職者)
- 健康保険任意継続被保険者資格取得手続き(希望者)
- 退職後に自身で行う手続き:
- 国民健康保険への加入手続き(任意継続を選択しない場合)
- 国民年金への切り替え手続き(転職しない場合など)
- 失業給付の申請手続き(受給資格がある場合)
- 転職する場合の手続き:
- 転職先での健康保険・厚生年金への加入手続き(会社が行います)
- 雇用保険被保険者資格取得手続き(会社が行います)
これらの手続きをスムーズに進めるために、それぞれの詳細を確認していきましょう。
健康保険、退職後の選択肢!任意継続と国民健康保険
会社を退職すると、これまで加入していた健康保険の資格を喪失します。退職後の健康保険の選択肢は、主に「任意継続被保険者制度」を利用するか、「国民健康保険」に加入するかのいずれかになります。
任意継続被保険者制度:
退職前の会社の健康保険に、一定の条件を満たせば最長2年間継続して加入できる制度です。
- 加入条件:
- 退職日までに継続して2ヶ月以上被保険者期間があること
- 退職日の翌日から20日以内に手続きを行うこと
- 保険料: 原則として、在職中の自己負担分に加えて、会社負担分も自己負担となるため、保険料は在職中よりも高くなる場合があります。
- メリット:
- 保険料が国民健康保険よりも安い場合がある
- 加入手続きが比較的簡単
- 傷病手当金や出産手当金が支給される場合がある(退職日以前から継続して受給要件を満たしている場合など)
- デメリット:
- 保険料が国民健康保険よりも高くなる場合がある
- 加入期間が最長2年間
- 扶養家族が増えた場合の保険料が変わらない
国民健康保険:
お住まいの市区町村が運営する健康保険に加入する方法です。
- 加入条件:
- 日本国内に住所があること
- 他の健康保険に加入していないこと
- 保険料: 所得や加入人数などによって計算され、市区町村によって異なります。
- メリット:
- 加入期間の制限がない
- 扶養家族が増えても保険料が一定額以上にはならない場合がある
- デメリット:
- 保険料が任意継続よりも高くなる場合がある
- 傷病手当金や出産手当金がない
どちらの制度を選ぶかは、保険料、扶養家族の有無、将来的な見込みなどを考慮して、ご自身にとって有利な方を選択しましょう。手続きは、任意継続の場合は退職した会社を通じて、国民健康保険の場合はお住まいの市区町村の窓口で行います。
厚生年金、加入期間に注意!国民年金への切り替え
会社に在籍中は厚生年金に加入していましたが、退職後は、転職するまでの期間や、自営業になるなどの場合は、国民年金に切り替える必要があります。
国民年金への切り替え手続き:
- 手続き場所: お住まいの市区町村の国民年金担当窓口
- 必要書類:
- 年金手帳
- 離職票または退職証明書
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑
- 手続き期限: 退職日の翌日から14日以内が目安
加入期間の重要性:
国民年金と厚生年金は、将来受け取れる老齢年金の金額に影響します。厚生年金に加入していた期間は、国民年金に上乗せして年金が支給されます。加入期間が短いと、老齢年金の受給資格が得られない場合や、受給額が少なくなる場合がありますので、自身の年金加入状況を把握しておくことが重要です。
日本年金機構の「ねんきんネット」を利用すると、これまでの年金加入記録や将来の年金見込額などを確認することができます。
転職する場合:
転職先の会社で、再び厚生年金に加入する手続きが行われますので、自身で国民年金への切り替え手続きを行う必要はありません。転職先の会社の人事担当者に、年金手帳を提出するなど、指示に従って手続きを進めましょう。
雇用保険、失業給付の受給資格と手続きの流れ
退職後、再就職までの生活を支援する雇用保険の失業給付(基本手当)は、一定の条件を満たせば受給することができます。
受給資格の主な要件:
- 離職日以前2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上あること(倒産・解雇などの場合は、離職日以前1年間に6ヶ月以上)
- 働く意思と能力があること
- 積極的に求職活動を行っていること
手続きの流れ:
- 離職票の受け取り: 退職した会社から離職票が交付されます。離職票には、離職理由や賃金などが記載されていますので、内容をよく確認しましょう。
- ハローワークでの求職申し込みと受給資格決定: 離職票、本人確認書類、印鑑、写真などを持参し、お住まいの管轄のハローワークで求職の申し込みと受給資格の決定手続きを行います。
- 雇用保険説明会への参加: 受給資格が決定したら、雇用保険説明会に参加し、失業給付に関する説明を受けます。
- 待期期間: 受給資格が決定した後、7日間の待期期間があります。この期間中は失業給付は支給されません。
- 給付制限: 自己都合退職の場合は、原則として2ヶ月または3ヶ月の給付制限期間があります。この期間も失業給付は支給されません。
- 失業の認定と失業給付の受給: 待期期間と給付制限期間(該当する場合)が終了した後、原則として4週間に一度、ハローワークで失業の認定を受け、失業給付が支給されます。受給期間は、離職時の年齢や雇用保険の加入期間などによって異なります。
- 求職活動: 失業給付を受給するためには、積極的に求職活動を行う必要があります。ハローワークの求人に応募したり、求人サイトを利用したり、転職エージェントに登録したりするなどの活動実績をハローワークに報告します。
失業給付の受給には、様々な条件や手続きがありますので、詳しくはハローワークの窓口で確認しましょう。
退職する会社での手続き!健康保険証の返却など
退職する会社では、社会保険に関するいくつかの手続きを行う必要があります。
- 健康保険証の返却: 退職日までに、会社から貸与されていた健康保険証を返却します。被扶養者の健康保険証も忘れずに返却しましょう。
- 雇用保険被保険者証の受け取り: 会社によっては、雇用保険被保険者証を退職時に交付してくれる場合があります。もし受け取っていない場合は、ハローワークでの手続きの際に会社に発行を依頼する必要があります。
- 離職票の受け取り: 失業給付を申請する場合は、会社から離職票を受け取る必要があります。希望しない場合は交付されないこともありますので、必要な場合は事前に会社に伝えましょう。
- 源泉徴収票の受け取り: 退職した年の所得税の精算に必要な源泉徴収票は、通常、退職後1ヶ月以内に会社から郵送されます。
これらの書類は、退職後の社会保険の手続きや確定申告などで必要になりますので、大切に保管しておきましょう。
転職する場合の手続き!社会保険の加入先変更
退職後すぐに転職する場合、社会保険の手続きは比較的スムーズに進みます。
- 健康保険・厚生年金: 新しい会社に入社すると、会社が健康保険と厚生年金の加入手続きを行ってくれます。入社手続きの際に、健康保険被保険者資格喪失証明書(前の会社から発行されるか、自身で手続き後に取得)や年金手帳などを提出するよう指示がありますので、それに従いましょう。
- 雇用保険: 雇用保険も、新しい会社で加入手続きが行われます。前の会社で加入していた期間は通算されますので、失業給付の受給資格などを判断する際に考慮されます。雇用保険被保険者証を提出するよう指示がありますので、保管しておきましょう。
転職する場合は、基本的に自身で国民健康保険や国民年金への切り替え手続きを行う必要はありません。新しい会社の人事担当者の指示に従って、必要な書類を提出し、手続きを進めましょう。
手続き漏れは損!スムーズな移行のためのチェックリスト
退職前後の社会保険の手続きは多岐にわたります。手続き漏れがないように、以下のチェックリストを活用し、スムーズな移行を目指しましょう。
退職前に会社に確認すること:
- 退職日
- 健康保険証の返却期日と方法
- 雇用保険被保険者証の交付の有無
- 離職票の交付の有無と時期
- 健康保険任意継続の手続きについて
- 源泉徴収票の交付時期と方法
退職後に自身で行うこと(転職しない場合など):
- 健康保険の選択(任意継続または国民健康保険)と手続き
- 国民年金への切り替え手続き
- 失業給付の申請手続き(該当する場合)
転職する場合に会社に提出するもの:
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
これらのチェックリストを参考に、必要な手続きを漏れなく行い、安心して新しい生活やキャリアをスタートさせましょう。もし手続きについて不明な点があれば、遠慮せずに会社の人事担当者や、管轄の年金事務所、ハローワーク、市区町村の窓口に問い合わせることが大切です。
まとめ
今回の記事では、退職前後に必要となる社会保険の手続きについて、健康保険、厚生年金、雇用保険を中心に詳しく解説しました。退職後の生活を安心して送るためには、これらの手続きを適切に行うことが不可欠です。この記事を参考に、ご自身の状況に合わせて必要な手続きを確認し、スムーズな社会保険の移行を実現してください。
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