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Q25 退職日は有給休暇を消化することになったが、その期間に転職先で働いたり、研修しても良いのか?

「やっと退職日が決まり、残りの有給休暇を消化することになった。せっかくだから、その期間を利用して新しい職場で少しでも慣れておきたいな…」

退職が決まり、有給休暇を消化する期間は、一見すると自由な時間に見えます。この期間を有効活用して、転職先の準備を進めたいと考えるのは自然なことです。しかし、有給休暇中の転職先での就業や研修は、法的な観点や現職との契約関係において、注意すべき点があります。

原則として、有給休暇中は労働者は労働義務から解放されます。しかし、その期間の行動が、現職の会社との間で結ばれた契約や法律に抵触する可能性も考慮しなければなりません。また、転職先との関係においても、入社前の就業が問題となるケースも考えられます。

この記事では、退職日に有給休暇を消化する期間に、転職先で働いたり研修したりすることの可否について、法律、契約、そして社会通念の観点から詳しく解説していきます。もしあなたが今、同じような状況を検討しているのであれば、この記事を最後まで読んで、慎重な判断をするための一助としてください。

目次

有給消化中の転職活動・就業は原則OK?法律と契約の線引き

労働基準法において、有給休暇は労働者の権利であり、その期間の過ごし方について、法律で明確な制限はありません。したがって、原則として、有給休暇中に転職活動を行うこと自体は何ら問題ありません。

しかし、転職先で実際に就業したり、研修に参加したりする場合は、注意が必要です。その可否は、主に以下の2つの要素によって判断されます。

  • 現職の会社との契約(就業規則、雇用契約など): 特に、競業避止義務や秘密保持義務に関する規定の有無とその内容が重要になります。
  • 転職先の会社との契約(内定承諾書、雇用契約など): 二重就労を禁止する規定や、入社日前の就業に関する取り決めがないか確認する必要があります。

法律で直接的に禁止されているわけではありませんが、これらの契約内容によっては、有給休暇中の転職先での就業や研修が問題となる可能性があるため、慎重な検討が必要です。

現職の就業規則を要チェック!競業避止義務や秘密保持義務

退職する会社の就業規則や雇用契約には、競業避止義務秘密保持義務に関する規定が定められている場合があります。これらの義務は、退職後にも一定期間課せられることが一般的ですが、その内容によっては、有給休暇中の行動にも影響を及ぼす可能性があります。

  • 競業避止義務: 退職した従業員が、一定期間、競合する企業に就職したり、自ら競合する事業を開始したりすることを禁止する義務です。有給休暇中に、競合他社で働くことは、この義務に抵触する可能性があります。
  • 秘密保持義務: 在職中に知り得た会社の営業秘密や顧客情報などを、退職後も第三者に開示したり、自分の利益のために利用したりすることを禁止する義務です。有給休暇中に、転職先で現職の会社の秘密情報に関わる業務を行うことは、この義務に抵触する可能性があります。

これらの義務の有効性や範囲は、その内容の合理性や期間の長さに左右されますが、違反した場合は、損害賠償請求などの法的措置を受ける可能性もあります。退職前に、これらの規定の内容をしっかりと確認し、有給休暇中の行動が抵触しないか慎重に判断する必要があります。

転職先の就業規則も確認!二重就労に関する規定の有無

転職先の会社との間で、すでに雇用契約を結んでいる場合や、内定承諾書に何らかの取り決めがある場合は、その内容も確認する必要があります。特に、二重就労を禁止する規定が定められている場合があります。

もし、転職先の就業規則で二重就労が禁止されている場合、たとえ有給休暇中であっても、正式な入社日前にその会社で働くことは、この規定に違反する可能性があります。違反した場合、内定取り消しや解雇などの処分を受ける可能性も否定できません。

また、入社前の研修についても、それが実質的な労働とみなされる場合、二重就労に該当する可能性があります。転職先との間で、入社日前の就業や研修に関する取り決めがないか、事前に確認しておくことが重要です。

トラブル回避の鍵!現職・転職先双方への誠実な対応

有給休暇中の転職先での就業や研修に関するトラブルを回避するためには、現職と転職先双方に対して誠実に対応することが重要です。

現職の会社に対して:

  • 有給休暇の取得理由を正直に伝える(必ずしも詳細を伝える必要はありませんが、嘘をつくのは避けるべきです)。
  • 競業避止義務や秘密保持義務を遵守する旨を改めて伝える。
  • 有給休暇中に転職先で働く可能性がある場合は、事前に相談してみる(必ずしも許可を得られるとは限りませんが、誠意を示すことが大切です)。

転職先の会社に対して:

  • 正式な入社日前に就業や研修に参加したい場合は、事前にその旨を伝え、会社の許可を得る。
  • 現職の退職日や有給消化期間を正確に伝える。
  • 二重就労に関する規定がないか確認し、もしある場合は、正式な入社日まで就業や研修を控える。

双方に対して誠実に対応することで、誤解や不信感を招きにくくなり、将来的なトラブルを回避できる可能性が高まります。

雇用保険の取扱いは?失業給付との関係に注意

退職後に雇用保険の失業給付(いわゆる失業保険)を受けようと考えている場合は、有給休暇中の転職先での就業に注意が必要です。

失業給付は、失業状態にあること、働く意思と能力があること、求職活動を行っていることなどの要件を満たす場合に支給されます。もし、有給休暇中に転職先で働き、賃金を得ている場合、それは「失業状態」とは言えず、失業給付の受給資格を失う可能性があります。

また、正式な入社日前に、試用期間として給与が支払われる形で働いたり、研修に参加して手当が支給されたりする場合も、同様に失業給付の受給に影響を与える可能性があります。

失業給付の受給を希望する場合は、ハローワークに事前に相談し、有給休暇中の転職先での就業や研修が失業給付にどのような影響を与えるか確認しておくことが重要です。

研修への参加はどうなる?現職との兼ね合いと許可

転職先の会社から、正式な入社日前に研修への参加を求められるケースがあります。この場合も、現職との契約や関係に注意が必要です。

研修の内容が現職の会社の秘密情報に関わる場合や、競業避止義務に抵触するような内容である場合は、参加を控えるべきです。また、研修期間中に拘束時間が長く、現職の有給休暇の趣旨(心身のリフレッシュ)を損なうような場合も、慎重に検討する必要があります。

可能であれば、現職の会社に研修への参加について事前に相談し、理解を得ておくことが望ましいです。もし許可が得られない場合は、正式な入社日以降に参加するなど、時期を調整することも検討しましょう。

転職先に対しても、現職の退職日や有給消化期間を伝え、無理のない範囲で研修に参加できるよう相談することが大切です。

もしバレたらどうなる?懲戒処分や損害賠償のリスク

もし、現職の会社に無断で、競業避止義務や秘密保持義務に違反するような形で転職先で働いたり、研修に参加したりしたことが発覚した場合、懲戒処分を受ける可能性があります。懲戒解雇となる可能性も否定できません。

また、会社の営業秘密を不正に利用したり、顧客を奪うような行為があったと判断された場合は、損害賠償請求を受ける可能性もあります。

転職先の会社においても、二重就労を禁止する規定に違反した場合、内定取り消しや解雇などの処分を受ける可能性があります。

安易な行動は、将来的に大きなトラブルにつながる可能性があります。リスクを十分に理解した上で、慎重な判断と行動を心がけることが重要です。

まとめ

今回の記事では、退職日に有給休暇を消化する期間に、転職先で働いたり研修したりすることの可否について、法律、契約、そして社会通念の観点から詳しく解説しました。有給休暇は労働者の権利ですが、その期間の行動は、現職および転職先との関係に影響を与える可能性があります。リスクを十分に理解し、双方に対して誠実に対応することで、円満な形で新たなスタートを切れるように努めましょう。

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